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実家に入るなり、どこからか見知らぬ一人男があらわれた。
そして男は玄関先の母を羽交い絞めにして口元を押さえつけた。
あまりの事態に私は言葉も出てこず、立ちすくむばかり。
彼はすかさず上着を素早く脱ぎ捨て――。
私を押さえつけた。見知らぬ男ではなく、私を。
「他の住人は?」
「退去してます」
状況がまったく分からない。彼は私と母のことなどまるで無視して、見知らぬ男と短い言葉を交わした。
「な、何? 誰なのこの人」
「ああ。彼はうちの従業員」
そんなことを聞いているのではない。
何なの? これは。どういうこと?
彼は口をパクパクさせている私の耳元に囁いた。
「うちは代々、金の採取を生業にしているんだ。血に砂金が混じっている女からね」
……何、言ってるの……?
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