血の砂金

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 母が言った。 「あなたの血には砂金が混じってるの」  初めてその話を聞いたのは小学生の頃。5年か6年か。いずれにせよ、高学年だったと思う。突然改まって何を言い出すかと思えば “血に砂金が混じってる” だ。  私は子供ながらにぞっとした。母から告げられた私の特異体質に、ではない。突拍子もないことを真剣に言ってのける母にぞっとしたのだ。 「私がそうなのよ。私の母もそうだった。だからきっと、あなたの血にも砂金が混じってるのよ」  母は一人で私を産んだ。結婚もしていない。検診も受けず、病院へも行かず。だから私の母子手帳は白紙だった。  母は人が信じられない。それは自分の血に砂金が混じっているからだと言う。    それでも母は、たった一人で大切に私を育ててくれた。一滴の血も流れないよう、大切に、大切に。
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