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 母のよしなしごとを聞いてからほどなくして、私は初潮を迎えた。  『血の砂金』のことなどすっかり忘れていた私は、学校でおなかが痛くなり保健室で生理用品を貰ったことを母に話すと、母は顔色を変えた。  私のスカートをめくり、スパッツと下着を一緒に勢いよくずり下げる。そして下着からナプキンを引きはがすと汚れるのもお構いなしに、指で念入りに経血をこすり広げてしげしげと見ている。 私は吐き気がした。 「……大丈夫みたいね。でも念のため、生理のときは学校を休みましょう」  母は私をふんわりと抱きしめて言った。  母は私をお風呂場に連れて行き、太腿を伝う血を綺麗に洗ってくれた。着替えを置く籠に置かれていた真新しい生理用のショーツ。もう用意していてくれたんだ。母の、母親らしい部分。いつだってそう、母は私のことを第一に考えていてくれる。そして身支度を終た私に『おめでとう』と、やわらかな笑顔を向け、やさしく頭をなでてくれた。  その日の夕食は私の好きな物ばかりが食卓に並んだ。だけど、私はどれにも箸をつける気になれなかった。母の、普通では考えられない行動があまりもショックだったのだ。  改めて目の当たりにした。母は信じている。“血に砂金が混じっている”などというバカげたことを。本当に、心の底から信じているのだ。  その後、トイレで処理をするときに自分でも確かめたが、金など混じっていない。仮に、母がそうだとしても私は違うんじゃないかと言うと、母は険しい顔をした。 「私もそうだった。流れている血にだけ混じっているのよ。念のため、確かめてみたの。でもだめ。念のため生理のときは学校お休みよ」 「大丈夫だから」と言っては、いつも私をふんわりと抱きしめてくれる。母の愛情が深ければ深いほど、私の母に対する嫌悪感も膨れ上がっていた。
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