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 私には転勤先の地方で知り合い、付き合って二年になる彼がいる。知り合ったきっかけは同僚の紹介――、要は合コンだ。  彼はこの土地の名士の御曹司だった。現代社会でもまだ田舎にはこんな風潮があるのだと思うほど、地域の方々に坊ちゃんなどと呼ばれ、ゆく先々では皆、彼には挨拶を投げかける。  そうかといって、人との垣根を感じさせない。分け隔てなく誰とでも付き合い、気心(きごころ)の知れた仲間もいる、気さくな人柄がにじみ出ているような人だった。 実際、誘われればこうして一般人の合コンにだって参加する。豪快な笑い声とその笑顔に、私は胸のすく思いがしてその場で好きになってしまった。  私たちは意気投合するのに時間はかからず、すぐに交際をはじめた。 一緒にいる時間が長くなると、彼とはどこか似たところがあるように思えた。それは胸の奥底に抱える孤独だ。  彼は家族との触れ合いを知らず、一人寂しく育ったという。母親は彼がまだ幼いころ自ら命を絶ってしまったらしい。父親も仕事が忙しく、会うのは年に数回だけ。中学に上がるまではシッターの事を、本気で親だと思っていたそうだ。  私も独りだった。母は私を見ていない。母の深い愛情は“『血の砂金』の秘密を守るため”という妄想でしかないからだ。
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