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「信じられないかもしれないけど……実は……身内にいたんだ。血に砂金が混じっている人が。この地方ではたまにそういう人が生まれるらしい。もしかしてお母さん、このあたりの出身なんじゃないか?」
「……嘘……。本当なの?」
「……うん。俺は見た」
「……本当?」
彼は無言で頷いた。
私は目の前が真っ白になった。
見た? 嘘でしょ? 私の今までの価値観がすべて覆された瞬間。そんなこと、あるわけない! でも、見たと言っているのは、私がこの世で一番信頼する彼だ。
地の底に引きずり込まれるように頭が重たくなっていく。それを手で支えるのに精いっぱいになった。そんな私をのぞき込む彼の目に、曇りは無い。
本当に、見たのね。
「確かめるわけにいかないけど……確かにお母さんがそう言ったんだよな」
「……うん。日光アレルギーって嘘なの。家の中で靴を履いてるのだって変でしょ? 私の習慣は全部お母さんが怪我しないようにって……」
「そうか……それでか。お母さんは君を守ろうとしていたんだな」
母との約束などなくても、結局私は物心ついたころからの習慣がやめられなかった。彼は子どもの頃から体に染みついた私の習慣をすべて知ってくれている。今まで訳は聞かずにいてくれたけど合点がいったように何度もうなずいていた。
「いいか。この話は絶対に他でしてはいけない」
彼は私を優しく抱きしめ、
「これからは俺が君を守る。一生大切にする。すぐに結婚しよう」
そして、暖かなプロポーズの言葉をくれた。
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