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少女はけげんそうにしながらも、去っていった。
しかし、どうしても僕には言えなかった。
彼女の背中の生首は、どうやら、彼女が探している自分の首だ。しかし、すでに腐敗が進み、泥色に変色していた。
あれはもう、彼女の求めている「私の首」ではあるまい。
僕は、彼女がひどく不憫に思えた。
あの少女は尋常でない目に遇っているのだから。
そうして立ち尽くしていた僕のすぐ脇に、もう一人、先の子と同じ年頃の少女がいきなり現れたので、思わず飛びすさった。
あやうく悲鳴をあげそうになる。
今度の少女には、首から上がなかった。首の断面には、赤黒い肉が血をこぼしながら、街灯の光を受けて鈍く光っている。
どうやら、これが「アキ」ちゃんのようだ。
アキの体は、両手を前に突き出して、ふらふらと歩く。先の子に奪われた、自分の頭を探しているのだろう。
二人は友達なのだろうか。そうだとしたら、かわいそうすぎる。
しかし、どうりで、最初の少女に見覚えがないはずだ。
彼女の首に乗っていたのは、「アキ」の頭だったのだから。
昨日、この先の茂みで首を切り落としてやった少女が、まさか友人の頭を横取りしてまで、自分の頭を捜し歩くとは思わなかった。
これでは、あの子は自分の頭を見つけることができないで、永遠にさまようことになる。
切った頭を背中にくくりつけてやったのは、ほんのいたずら心だったのに。
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