歯をくいしばれ

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大きな背中だったと思う。 酔いつぶれた自分を背負ってくれた男からは、ブランデーのような熟成された枯れた匂いがした。 夢かどうかは知らないが、随分気持ちのいいキスをした。 口に優しく唇が当たる。 それを夢中で貪った。顎に手をかけられて持ち上げられる。 覆いかぶさるように唇が、舌が入り込んでくる。分厚い舌が俺の口を犯す。 ワイシャツを脱がされると、乳首を触られた。 「寝ていればいい、気持ちよくしてやろう」 ベッドに寝かされてベルトを外されパンツをずらされた。 何を言う気にもなれなかったのは、しこたま酔っ払っていたからだと信じたい。 ……いや、途中から解っていたのだ、俺は男とナニをしようとしていると。 薄目を開けると、短く刈り込んだ頭が自分の股座に潜り込んでいるのが見えた。 そして息子に生暖かい舌の感触、嗚呼ひさしぶりのごぶさた。途端に元気になる息子の性が哀しい。 「あ、俺、やだ、そんな、知らない人に、ああ、ああ、やばい、でちゃう!」 「出せよ、そういう事してんだからよ」 その男のフェラチオは非常に上手かった。もはやプロ並だ。 そして、多少酔いの冷めた俺が見たものは、明らかに何かのプロ、そう、やーさんの風体をした男だった。 「悪かったな、お前さんが酔いつぶれていたもんだから。別にやましい気分でホテルに連れ込んだ訳じゃねえよ。だけど、目の前でモッコリさせられちゃあよ…」 そう言って、俺のイチモツから唇を離し、俺の顔を覗き込んだの男は、自分より随分年上の男だった。 体格はすわプロレスラーか。太い眉に、シャツを脱いだ肌シャツから見えるのは藍色の龍の尻尾と、頭だ。 悲鳴をあげたくなる。 男にしゃぶられてしまったのもそうだが、俺はれっきとした一般人である。 こんなやつとは関わりたくない。でもいまさら帰りますだなんて言って、機嫌を悪くされてしまったらどうしよう。 酔いは、完全に冷めた。 男は最上と名乗った。 「マコトと言ったっけ。水飲むか。出て行きたければ行っていいぜ。こんなことをするつもりじゃなかった。これは本当だぜ。俺は悪い男じゃないって言ってもこんなナリじゃあ、信じねえわな。「あやこ」って店でお前飲んでたの、覚えてる?俺の馴染みの店なんだが、そこに飲みに行ったら、酷く酔ったお前が他の客に絡んでてよ。それで俺が止めに行ったら今度はこっちに絡むから、仕方ねえから俺のホテルに連れてきたんだ。けして襲おうと思ってじゃないぞ。…でもまあ、なんだかつい、悪戯が過ぎちまった」
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