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「本当? もう、一人にしない?」
勿論だと頷けば、彼女は泣きじゃくりながら拝み、お礼の言葉を繰り返した。
あぁ。そうだ、独りになんかしないよ。
目を閉じれば蘇る光景。暗い山の中。
赤崎は彼女が立ち去ったのを見届けて、崖の下に降りた。
血を流して横たわる幼馴染みの男が呻く。瞬間、化け物のような力で襲いかかってきた。
お前がいなければ俺を選んだ。お前さえ。
呪う声は消えない。
無我夢中で石を奴へと振りかぶったのも鮮明に焼き付いている。
頭蓋骨を割った感触が、こびりついている。
土のベッドで寝ている奴は彼女を呼んでいる。あれが――彼女が欲しいと囁く。ならば届けてやらなければ。それが奴の贖罪になると信じて。
長年の問題が全て片が付く。解放される。
さぁ、山へ行こう。奴と一緒になるために。
痩せこけた彼女は、幸せそうに微笑んだ。
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