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結婚式を終えて
身内だけの結婚式を終え、ハネムーンに旅立った息子のユウと花嫁を見送り、家路につく。ユウがあんなに逞しく頼り甲斐のある青年に育つとは、感慨深いものがあるなと結婚指輪をした左手を繋いで、思った。
「いやぁだぁー! やぁあぁぁだぁぁー!」
近所の公園で駄々をこねて、泣いている子どもがいた。
「子育て、大変だったなあ」
その子を見て、ぼくが呟くと、隣りで手をつないでくれているパートナーが呟いた。
「子育て、あっという間だったよね」
「うん」
ぼくとユウの間には、血の繋がりがない。パートナーとも、血の繋がりがない。ユウはぼくらの養子だからだ。ぼくらは互いに三人とも、血縁関係のない家族なんだ。
「あの子ぐらいの時にユウが言ったこと、覚えてる?」
パートナーが水を向ける。
「うん」
「ユウが駄々こねてさ。大変だったよね」
「うん」
「幼稚園も年長さんになると、色々あるんだろうね。まさかでもお母さんが欲しいと言われるとは」
「うん……」
予想だにしなかったよ、とパートナーが呟いてぼくの隣りで笑う。
ぼくの結婚相手は芯が強い。ユウを引き取ると決めた時、証券会社でトレーダーをしていた彼は生活を一変させ、より時間の融通の利く部署へと移動した。日本で同性婚に関する法律ができてすぐのことだった。ぼくは元々がギター講師をしていたので、収入は二人合わせても十分だったし、何よりユウにメロメロ(この表現はもう古いだろうか?)だったぼくたちは、喜び勇んでユウを引き取った。
でも、物心がつきはじめてからは大変だった。
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