全てを捧げる初恋に報いあれ

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「真人っ...真人っ....んっっっ.....」 「っあああっ....」 「あぁ....はぁはぁ」 優は自身の精を吐き出し正気に戻る。 抱かれる妄想をしながらしたって虚しいだけなのに、真人は僕なんかに振り向きなんてしない...だけど希望があるなら一度だけ、一度だけでいいから 僕を抱いて 朝6時母親に叩き起こされ目を覚ました。部屋から出て階段を降りる。リビングに置いてある朝食を食べ、学校に行くための準備を始める。いつもと同じ時間の電車に乗った。 今日は運がいい日なのか電車の中で真人を見つけた。すらりと長い手足に細く流れるような切れ長な目まるで作り物のようだ。 真人は遅刻をしたり学校に来なかったりするのはザラだから見れるのは月に数回ほどだが優にとって真人を眺めるのは通学中の唯一の楽しみとなっていた。 眺めているだけでも幸せなんだ。 「まさとおはよー」 短いスカートに魅せるように着崩した胸元、スクールメイクと呼ばれる控えめな化粧をしているだけなのにかなりの美人だ。あの子が最近の彼女らしい。 「ん、美香か、はよ」 普通の彼氏なら目をみて挨拶くらいすると思うのだが真人は目も合わせずに返事をする。美香と呼ばれる女の子は腕に抱きつきもたれ掛かかるように胸を押し付けるが特に気にする様子もなくスマホをみている。なんとも思わないことに対して不満そうな顔した。まぁ少しは同情する。あれだけ美人に素っ気ない対応をできるのは真人ぐらいだ。真人は本当に美香を彼女だと思っているのかさえも疑問に思うほどだ。性に奔放なのは周知の事実で週単位で彼女が変わることに誰も驚いたりしないから当然なのか。などと色々考えているうちに駅についた。 僕は学校でいつも1人だ、カーストの最下位に位置する優はいじめられることはないものの新学期、真人とたまたま席が隣だった優に掃除を押し付けられた。いつの間にかクラスがそういう流れになり他の人達も自分がいじめの標的になりたくないと優に頼んできた。断る事もできず教室の掃除担当になっていた。押しに弱いからなのか先生にも誰もする人がいないからと言われた図書委員の仕事も頼まれ、受けてしまった。 七限目の授業が終わり毎日教室の掃除をして、、委員会の当番があるときは図書室に行き本を読む。放課後に図書室に本を借りに来る人などほとんど居ないので正直言って暇だ。五時五十分に鍵を閉めてから帰路に就くそれが優の日常になっていた。 雑巾を濡らしよし、掃除頑張るぞ!と気合を入れてガラガラと教室の引き戸を引くと.... 誰かが机の上で長い脚を組んで座わっていた。その目線は外に向いているので顔は見えない何かあるのだろうか。 「えっ...ま、まさと」 優は驚きのあまり大きな声で名前を呼んでしまった。今日会ったのは二度目だ、これは運が良いのか悪いのか…… 「あ?なんだ」 こ、怖い.....なぜ真人が教室にいるんだろうか。毎日その時の彼女が迎えがきていつもつるんでいる人たちと遊びに行くはずなのに。 そんなことより返事しないと…… なんだと言われても勢いで名前を呼んでしまったので特に用がない、いや用があるはずないので答えることが出来ず言葉に詰まってしまった。 「えっと....あの....あ....」 「あー掃除か、この前もやってなかったか?」 と言われ唖然とする。 毎日やってますよだいたい押し付けたのは真人なのに覚えてないの?と言いたいが必死に抑える。 「えっと....僕が毎日してます」 「へぇ」 続く言葉が思いつかずここで会話は終わってしまった。 何か気に触ることを言っただろうかと心配になったが特に思い当たらなかったので考えるのを止め、掃除を始めた。真人は外を眺めているだけだが側にいるのは緊張する。しばらくすると教室から出て行ったのでホッとした。 会話といえるか分からないが真人と話せたことが嬉しく、心臓はドキドキして爆発しそうだった。
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