せんせいはくま

ひっひっひ、

たまに先生が、

くまじゃなくて

あくまに見える時がある

【せんせいはあくま】

ひげもじゃ、というのが先生のあだなだ。保健室の先生、俺の休憩室。でも最近そうはいかなくなってきた。

ある日先生がひげを剃った。

そしたら意外にイカしてた。

そしたらあだ名が安藤先生になって、女子が急激に入り浸るようになったのだ。

俺達男子はなんだか居づらくなって、段々保健室に近寄らなくなった。

ちょっと、暇になった。なんか、寂しくなった。

ある日俺が保健室を覗くと、珍しく先生が一人で机に向かっていた。

先生、と呼んだらでっかい背中が振り向く。そしたら先生はひげもじゃだった。

「あれ、先生ひげ。」
「おう、久しぶりだな、どうした」
「女子は？」
「うん、俺が髭を伸ばしたらサイテーとかなんとかつって、みんないなくなっちまった」
「なんで」
「ん？」
「ひげ剃らないの。女子が寄らないようにまた生やしたの？……俺とかが来にくいからってさ」

先生が笑う、のどちんこが見える位大きく口を開ける。

俺はなんか、見透かされている気がした。俺もあんまり解らない心の奥の甘酸っぱい感情を。

あ、やっべえ、と思った。

先生はさあな、と言って

「お前はどっちの俺が好き？」

と俺の頭を撫でた。

俺も先生の真似をして、さあな、と言った。

くまは、

時々、

あくまに見える。

【せんせいはあくま】完