母の捕食対象

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 いよいよ地球が太陽を飲み込む時となった。    100年前、太陽人の使者が地球にやって来て、   「我らが母、太陽は空腹なので地球を食べることにしました。逃げても無駄なので、そのまま地球に居続けるようにしてください。前回は事前通告が無く申し訳ありませんでした。今回は確かに通告しましたので。それではご機嫌よう」    と、言ってきたのであった。    人類は食べられることを防ぐために、各国共同で技術革新を進め、火星移住計画を実行した。    しかし、地球を人類の母と崇め、死を共にする思想を持つ者たちは地球と共に死する決意を固め、火星に移り住まなかった。    そして捕食当日    太陽が地球を捕食する瞬間を、火星の住民は固唾を飲んで眺めている。    中には、地球に残った人々のことを馬鹿にして、酒の肴にする者も。    太陽は待ちかねた様子で、大きな口を開き、いよいよ捕食を始めようとした。    しかし太陽は何かに気づき、その行動を中断する。    太陽はそこから、火星に向け動き始めた。    火星の空には、口を開けながら段々と近づいてくる太陽の姿が浮かんでいる。    逃げ惑う火星人。急いで自家用船に乗り込み星を出ようとする人で、火星の出入星ゲートはごった返す。    太陽は恐ろしいスピードで火星に向かい、その大きな口をもって火星の生命を吸い尽くした。    太陽の食事終了後、地球に太陽人の使者がやって来た。   「地球人の皆さん。我らが母、太陽は生命が好物です。より多くの生命がいる星へと捕食対象を変更しました。もう、あなたたちが食べられることはありません。次の食事は6600万年後ですからね。恐竜、人類、その次は一体どんな生命を食べることができるのか、我らが母はとても楽しみにしておられます」    
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