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 あいつの家に私物置かないで良かった。浮気を疑ってたわけじゃないけど、でも何となく自分の私物が他人の家に置いてあるのって嫌だ。あ、私別れたかったのかな。そもそもあいつのことなんて好きじゃなかったのかも。自分の私物を置けるような人じゃなかったって、つまり自分も彼のことが好きだったってしてただけで。結局、疑似恋愛だったんだ。そうかそうか、それなら納得。苛立ちはしたけど、涙は出てこない。悲しいとも思わない。胸がチクリとも痛くならない。ただ今は顔が冷たい。  家に着くと、スーツケースのキャスターを拭いてから家に上がる。部屋にスーツケースを放り投げ、首元のボタンを開けると冷蔵庫に入れておいた缶ビールに手をつけた。ぐびっと勢いよく飲み、それから缶を潰してゴミ箱に投げ入れる。また新しい缶ビールを開けると、ぐびっと胃に流し込んだ。 「何だよ、5年も付き合っといて浮気とか。何なの。あんな守ってあげたくなるような女子にコロッと行っちゃって。馬鹿なの? 馬鹿だよね? ああ、。ハハッ、私って馬鹿だなぁ。馬鹿、馬鹿、馬鹿。ハハハッ、あんな馬鹿と付き合ってたなんて笑える」  ダンッと大きな音を立てながらキッチンカウンターに空になった缶ビールを置くと、その場に崩れ込む。 「ちくしょー、覚えとけ。お前なんかより絶対にいい人見つけて結婚してやる。お前は彼女に振られまくって、結婚しても一年と持たず離婚でもしてろ。呪いをかけてやる」  私はゴミ箱に缶ビールを投げ捨てると、縁に当たって缶が弾かれ床にコロコロと転がった。  立ち上がって缶をゴミ箱にきちんと捨てると、ポケットからスマホを出して躊躇なくあいつの連絡先を消す。メッセージもブロックして、何だかあいつから解放された気がしてスッキリした。 「
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