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かわるがわる二人の顔を見比べる私に構わずに、莉子ちゃんは当たり前のように萌ちゃんと話し始める。
「萌、今日の放課後、遊べる? 久々に三角公園に行こうよ」
「莉子ちゃん、今日の午後から雨って言っていたわよ?」
「少しくらいの雨なら平気だよ!」
「やっぱり遊ぶの? 風邪ひくわよ。ねえ、美優ちゃん」
萌ちゃんは、私を見て、にこりと笑った。
ああ、そうなんだ。萌ちゃんは、戻ってきたんだ。そうだよね。これから私、萌ちゃんに天使の指導をしてもらうんだもんね。
藤崎さんも、これからいろんな準備をしていずれ私たちと暮らすことになるらしい。藤崎さんはすぐにでも一緒に暮らしたいらしいけれど、なにか立場がどうの仕事がどうのってママに怒られてた。
十年も離れていたわりには二人が一緒にいる空気はとても自然で、とても仲がいいんだってことは見ていてよく分かる。この二人が私の両親なんだなあ、って思ったら、なんとなくくすぐったいような幸せな気持ちになった。
私にパパができるって今の莉子ちゃんには言いづらい。けれど、話したらきっと、一緒に喜んでくれるんじゃないかな。
「そうだね。萌ちゃん」
これからもよろしくね、と頭を下げた私を、莉子ちゃんは不思議そうに見てた。
「何?」
「ううん、なんでもない」
「ふーん? ……あ、もうこんな時間!」
莉子ちゃんが、信号の向こうにあった時計塔を見てあわてた。
「遅くなっちゃった。いこ、萌。美優」
「うん」
「行きましょう」
私たちは、学校へ向かって足を早めた。
Fin
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