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「君はよくやっている。君たちがどの闇を相手にするか、見極めるのは僕の仕事だ。だから、君を危ない目に合わせてしまったのは僕の責任だ。すまなかった」
「そんな……いつも助けられるばかりで……私……」
「どうも僕はどこか抜けているみたいでね。君には苦労ばかりかける」
そして男性は、力いっぱい首を振る少女の手をとって立たせた。
「けがはないかい?」
「はい」
「しばらくは休むといい。そしたら、次の場所へ行ってもらう」
は、と少女の顔が厳しくなった。
「次は、どこへ?」
「それはその時に。まずは体を休めよう」
「いいえ、大丈夫です」
「だが」
「次の仕事が決まっているという事は、もうすでに闇ができているという事なのでしょう? だったら、少しでも早い方がいいです」
男性は、困ったように少女を見つめた。
「いいのかい?」
「もちろんです」
しばらく考えていた男性は、ふ、と軽く息を吐いた。
「わかった。では、すぐ準備をしよう」
そう言って軽くうつむいた男性の背から、ばさりとその背の倍もある白い翼が現れた。
きれい。
光がこぼれてくるような、一点の曇りもない真っ白な翼。
(いつ見ても、大天使様の翼はきれいだわ)
少女も同じようにして自分の翼を開く。だが、彼女の翼は、半透明で大きさも彼の半分ほどしかない。
彼とは違う、借り物の翼のせいだ。
「行こうか」
「はい」
二人は、うなずき合うと、ふい、と空へと飛び立った。
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