第一章 今、天使って言った?

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第一章 今、天使って言った?

「ねえねえ、読書感想文、なんの本にするか決めた?」  莉子ちゃんが、赤信号で足を止めて振り向きながら言った。二つに結んだふわふわの髪がいきおいよくゆれている。  答えようとした私は、その時急に吹いてきた強い風に思わず肩をすくめる。  うう、今朝は寒い! 「莉子ちゃん、まだ決めてないの?」  私より先に、おっとりと萌ちゃんが聞く。多分、言いたいことは私と同じだ。  だって、その宿題が出たのは先週の話。だから私は、昨日の日曜日に終わらせてしまった。提出は今度の木曜だから余裕はあるけど、まだ何の本にするか決めていないとは思わなかった。  莉子ちゃんは、ぷ、とほっぺたをふくらませる。 「私、感想文って苦手なんだもん。……あ、去年のそのまま写しとけばいっか!」 「ダメだよ、莉子ちゃん」  私があきれて言うと、莉子ちゃんは、むー、と口をとがらせた。 「去年? 読書感想文って、毎年書くの?」  萌ちゃんが、首をかしげる。 「うん。あれ? 萌ちゃん、前の学校ではやらなかった?」 「そうねえ……なかったわ」  そっか。萌ちゃんは二学期になってからうちのクラスに転校してきたから、去年のことは知らないんだ。 「読書旬間に合わせて、毎年全校で書くのよ。上手に書けたら、県のコンクールとかにも出すんだって」 「そうなんだー。莉子ちゃん、去年は何書いたの?」 「『不思議の国のアリス』」
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