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「今日はいいよ」
「え、なんで?」
「俺と慎でやっとくから、お前は、保健室」
「保健室?」
「美優さん、ひざ、すりむいてるよ。ほら、ここ」
見れば、私の左足のひざが見事にすりむけて、血が流れていた。
「このままじゃ、スカート汚れちゃうから、少しふいとくね」
慎くんは私の前に膝をついてしゃがみ込むと、痛くないようにそっと私の膝の血をティッシュでぬぐってくれる。
「ありがと、慎くん」
「どうしたしまして。結構、出血してるよ、これ」
「ほら、これも使え」
颯太が持っていた自分のポケットティッシュも渡してくれた。ぐしゃぐしゃだ。
「あ、うん」
「うわ、美優、痛くないの、それ」
顔をしかめて莉子ちゃんが言った。
「……ちょっと、痛いかも……」
気づいたとたんに、その傷はひりひりと痛みだしてくる。情けないのと痛いのとで、じわり、と涙が浮いてきた。
「ホントにドジだな、美優は」
颯太が、莉子ちゃんと同じことを言いながらぐしゃぐしゃと私の髪をかき回す。
「や! やめてよ、頭ぼさぼさになっちゃう!」
あわててその手を振り払うと、意地悪く颯太が笑った。
「さっさと手当てしてもらえ、それ」
「美優ちゃん、一緒に、保健室行こう」
「ありがと、萌ちゃん。じゃあ慎くん、にわとり当番お願いしてもいい? 次の慎くんの当番の時、代わるから」
私が慎くんを見上げた時だった。
「慎くん、おはよう」
「おはよー!」
後ろから、二人の女子が声をかけてきた。一組の安永さんと菊池さんだ。
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