プロローグ バカに彼女ができました

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プロローグ バカに彼女ができました

 とある日の早朝。    特に理由もなく早めに学校に来てしまった僕、白崎真人(しらさきまひと)は独り大あくびを噛み殺せずに変な顔になっていた。  誰にも見られたらヤバいな、なんて思っていた時、大きな音を立てて図体のデカイ男がやってきた。間が悪い。 「いたいた! 今日に限って早いんだよお前!」 「あー、おはよ田森。今日も肩幅広いね」 「うるせっ。毎度毎度弄ってくんな。お前に見せたいもんがあったからわざわざお前ん家行ったのによ」  この人は田森雄大(たもりゆうだい)。  小さい時から一緒にいる、いわゆる悪友というやつ。肩幅が本体だ。因みに下の名前で呼ばないのは苗字の方が呼びやすいからで特に理由はない。  いつになく焦った様子の田森になんとなく違和感を感じていると、田森は思い出したように右手に持っていた洋梨マークのスマホを僕の方へ突き出した。 「ちょちょっ、スマホはこの世でもっとも汚い…?」    昨日ネットニュースで見かけた知りたくなかった情報。覚えたてだったこともあり思わずのけぞってしまったが、画面を見て思わず固まる。  そこに映るのはTwitterの投稿画面なのだが。 「なんで僕の写真投稿してるの? それもこれ、盗撮くさいんだけど…まじ?」  ずらりと並ぶ僕のオフショット。どうやって撮ったのか家でごろ寝している時のものもある。  いつの間にか犯罪者へと転身していた友達に思わず頬が引き()ってしまった。 「違う違う! 俺のアカウントな訳ないだろっ! よく見てみろって!」 「声大きいって──うわぁ…」  何やかんやいつもの悪ふざけだろうと思っていたけど、今回は違うみたい。  投げ渡されたスマホの画面をスクロールして、田森がなぜそんなに焦っているのかようやく理解できた。 『今日も真人きゅん可愛いよぅ』『寝起きの真人きゅん』『使用済みストロー無事回収』  そんな呟きと一緒に載せられた僕の写真。そのどれもが先程と同じ盗撮されたようなものばかり。そしてアカウント名が──。 「真人しか勝たん…僕いつの間にこんな狂信者作ってたの?」 「それはこっちのセリフだ! どうすんだよこれ。お前が飲み終わったペットボトルとか、たぶん根こそぎいかれてるぞ」 「ぽいね。流石にこれは…」  自分で言うのも何だが、何事も楽観視しているところが良いところだと思う。だけどもこれはちょっとサブイボが立った。  冗談とかそういう次元を超えてる。いつもならもう少し可愛げがあるのに…。 「うん、今回はやりすぎだよ。何が目的なの?」 「だから違うっつってんだろ! 現実から目を背けるなって!」  これは現実じゃない。そうでしょ?  そんな(はかな)い想いが通ずることもなく、壊れた人形のように乾き笑いだけを漏らす僕を田森はひたすら揺さぶり続けた。
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