1話 バカの彼女は訳ありですか?

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1話 バカの彼女は訳ありですか?

 僕らが付き合い始めて約一ヶ月。  その間特に変わったことはなかったが、一つだけ僕的にはだいぶありがたいことがあった。  それは、ストーカーが更新していたTwitterがストップしたこと。  理由はわからないが、『真人きゅんペロペロ』というコメントと一緒に僕の顔面ドアップ写真を最後にぱったりと更新がなくなり、気がつけばアカウントが消えていた。  もしかしたら新しく作り変えたかも、ということで田森が色々探してくれたみたいだけどそんなこともなく。  晴れて自由の身となった僕は毎日空気が美味しく感じていた。 「田森、やっぱり僕強がり言ってただけでストーカーにビビってたのかもしれないね」 「そうだなー」 「空気ってこんなに美味しいんだ。僕は今まで知らなかったよ」 「そうだなー」 「多分それは晶さんのおかげもあるかもしれないんだけど」 「そうだ──晶さん? お前いつの間に東條さんのこと下で呼ぶようになったんだよ」  昼食時間、珍しく晶さんが友達とご飯を食べると泣きながら連絡してきたので、田森と一緒に屋上にきていた。  寝転んでいた田森が急に飛び起きたせいで僕の持っていた苺ミルク(紙パック)がこぼれてしまう。 「「あ」」  沈黙。沈黙。沈黙。 「で、いつから東條さんを──」 「スルーすなっ!」 「あ痛っ!」  無かったことにしようとした田森の頭をスパコーンと叩き、()れてしまったワイシャツを急いで脱ぐ。  最悪だよ。絶対臭くなるやつじゃん。まだ後二つ授業残ってるっていうのに。  ぶーたれる僕を見て小馬鹿にするように笑う田森。これはまだ()りてないやつだな……。 「ちょちょちょ! 悪かったって! だからその苺ミルクをおろせって!」 「謝るんなら最初っから謝れよな」  僕の苺ミルクを大袈裟に恐がる田森に満足した僕は、脱いだワイシャツをパタパタと乾かしながら先程の質問に答えた。 「いつからって昨日の晩からだよ」 「は? 昨日?」 「そ。昨日っていうか前から言われてたんだけどね、名前で呼んでって」  不思議そうな顔をする田森に苦笑いを返す。 「何となく恥ずかしかったから無視してたら、昨日の晩電話口で泣かれてさ。名前で呼んでくれないと死ぬってカッターの写真が送られてきたから、僕も根負けしたんだよね」 「は!? カッター!?」 「うっさ……驚きすぎでしょ」  何を驚いたのか飛び起きた田森に冷たい視線を送る。  そりゃ最初は僕も驚いたけど、調べたところによると人は時たまヒステリーになることがあるらしいし、驚くほどのことでもないっぽい。  何だこいつ、と思っていたが、よく考えると田森の浮いた話はこれまで聞いたことがない。これはもしや……。
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