第13話_灼熱の拳

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なにやらおののき始める[海華(ウナゲ)]に代わるように[異形]が唸り、先端だけ硬化させた触手で(ロードナイト)を襲う。しかしロードナイトはすぐさま『紅蓮(グレン)』を呼び出して一閃する。一薙ぎで触手の刃は細切れになり、彼の周囲にばら撒かれて蒸発した。 明らかに『ロードナイト』が使う『炎』の属性とは違う挙動に、後方から見守る葉月(エピドート)影斗(オニキス)は目を見開いていた。 「…後発属性だ…!」 「あいつ…、どのタイミングだ? さっきか!?」 「…思い出した。"てめぇが生え出る"ところだったな」 周りの動揺には構わずロードナイトはふいに跳躍し、悲鳴をあげながらうごめく[異形]のそばへ降り立つ。[異形]から[海華]へ細く伸びる一本の触手を難なくその眼に捉えると両手で紅蓮を構え、その根元を思いっきり突き刺した。 ひときわ大きな絶叫が轟き、[異形]は触手をぐたりと地に落とし、しわ枯れて沈黙する。 [異形]を倒し、長く息を吐き出すと、ロードナイトは残った[侵略者]へ振り返った。 「退()け!」 その怒声と眼光に、ひるんだ[海華]は口元を震わせながら蒼矢(アズライト)から遠ざかっていく。 入れ替わるようにロードナイトがアズライトの元へ跳び、彼を縛る触手を高温の手のひらで引き千切って解放する。ぐたりと腕に落ちる身体を慎重に抱え、地に降り立つと静かに寝かせてやる。 そして彼を護るように前に立ち、[海華]へ近付いていく。 「…っ来るな、痴れ者!!」 [海華]は生み出せる限りの触手を繰り出すが、ロードナイトの造る透明な『熱の壁』にその全てが焼き焦がされていく。 「……」 壁を張ったまま、ロードナイトは[海華]の鼻先にまで近寄った。 憤怒の面様をたたえる彼の前に、出せる触手が尽き丸裸になった[海華]はなおも吠えた。 「許しなど請わんぞっ…下等生物ごときに…!」 「…アズライトを汚したてめぇは余程高等らしいな。これから消える奴から詫びなんか要らねぇよ。てめぇは還してやらねぇ。…この場で蒸発させてやる」 ロードナイトは紅い眼を見開き、[海華]の顔面を掴んで握り潰す。 もがく[海華]はロードナイトの腕に前肢をかけるが、彼の放つ高熱にあてられ、触れた部位から見る間に溶けていく。 「あ゛……ア゛、ァ゛…、……」 [海華]だったもの(・・・・・)はぐずぐずと地に溶け崩れていき、泡立ちながら蒸発し、消えて無くなった。 『転異空間』の[脅威]は消え去った。
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