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第13話_灼熱の拳
動けない影斗と葉月は、怒りと悔しさをにじませた表情でその凄惨な光景を見続けていた。
膝をつく烈も同じく歯を食いしばりながら見ていたが、やがて視線は地に落ち、拳を握り込んだ。
「……くそ…」
昨日の前戦も含め、自分の行動を思い返していた。
蒼矢を捕えられ、チャンスはあったのに逃して救出できず、属性相性も最悪で刃の装具なのに敵の触手一本も断つことができない。任されたのに[異形]を倒しきれずアズライトを再び奪われ、挙句考えなしに味方の邪魔に入って毒を喰らい、動けなくなってしまう。
…俺、今まで何やってた…? 何が出来てた…!?
…攻撃役なのにろくにダメージも与えられねぇで、みんなの足引っ張ってただけじゃねぇか…!!
固く握り込んだ拳が震え、グローブの間から血が滲んでいく。
「くそ…っ…!!」
このまま役立たずで終わりたくない。
強くなりたい。
みんなを守れる、力が欲しい。
涙のにじむ目を瞑り、震える拳に額を寄せた。
「…っ!」
…蒼矢を…助けたい。
ふいに、ロードナイトの拳に何かが触れる。
人肌くらいの温かみを帯びるそれは、痛々しく傷ついた手のひらをいたわるように、じんわりと包み込んでいく。
「……?」
ロードナイトは虚を突かれたような表情を浮かべながら、自分の手を見つめる。握りしめていた拳を解くと、しわの寄ったグローブからは既に、滲んだ血の痕が消えていた。わずかにしか感じられなかった手の温かさは次第に強さを増し、全身へと伝い広がっていく。
「……」
ロードナイトはひとり、静かに立ちあがる。
「…ロード?」
傍らのエピドートが声をかける中、ロードナイトは一歩ずつ[海華]へと近付いていった。
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