第13話_灼熱の拳

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「…!? ロード! 危険だ!!」 その喧騒に、再び蒼矢(アズライト)の唇へ喰いつこうとしていた[海華(ウナゲ)]が振り返る。 「なんだ、今ごろ毒が消えたのか? …軟弱な奴よ」 [侵略者]に虫けらを見るような目で蔑まれるが、(ロードナイト)は意に介さないように歩を進めていく。 その様子に[海華]は一時真顔になるが、すぐに小馬鹿にするように嘲笑った。 「無駄だよ。お前の能力は私と相性が悪い。それに私の好みでもない…搾取してやってもいいが、筋肉にまみれたその身体…くどくて嘔吐(えづ)きそうになる」 そんな辛辣な言葉を浴びせかけられても、ロードナイトの足は止まらない。変わらず無反応な彼に、[海華]の顔貌が歪んだ。 「…耳が聞こえないのか? …近寄るなと言ってるんだ!」 苛立つ[海華]は脇腹からロードナイトへ向けて、高速で触手を射出する。 が、獲物を巻き取るはずのその先端は、彼の片手に掴まれた。 「っ…!!」 刹那、[海華]は異変を感じ、伸ばした触手を自切する。そして断面部を一瞥してから、ロードナイトの手元を睨みつけた。 その視線の先では自身の切れ端が、彼の拳の中でびくびくと痙攣しながら白煙をあげていた。弾力ある組織は無抵抗に握り潰され、ぼたぼたと溶けながら落下していく。 「こ…の…っ!!」 憤激した[海華]は、両脇腹からおびただしい数の触手を浴びせかける。 ロードナイトは襲い掛かるそれらを目の前にし、手のひらをかざす。触手は彼の身体に到達する直前に何かにぶつかったようにさえぎられ、自らの勢いで潰れた後、泡をふきながら融解していった。 焦げつくような異臭を放ちながら形崩れていくその様に、[海華]は動揺と本能的(・・・)な恐れで震え、引っ込めた触手をざわつかせ始める。 「…!? …っ貴様…、その力は…!!」
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