ササヤカな栞

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もう、忘れてしまったかな。 誓いの愛を分け合った甘い味。 「お母さん、お湯沸いてるよ」 「今日はミルクティーとココアとどっちがいい?」 「ミルクティー」 「実結は甘い飲み物ばっかりね」 ブラックコーヒーを飲む母が呆れたように言う。 「好きなんだもん」 「カフェオレよりミルクティーを飲むようになったのもこの頃だったのよ」 「そうなんだ」 「この女の子がよく飲んでたのよね」 「この子はどこの子?」 「いつもおばあちゃんが一緒にいらしたから、おばあちゃんは公園の近所の人ということしか……」 「そっかぁ。残念」 いつか再会することがあったら 友達になれたりするんだろうか。 きっと美人になってるよね。 白い肌に透き通る茶色い瞳。 サラサラの茶色い髪。 噴水の水が出たり止まったりするのを 興味津々に見ていた横顔。 思い出にある記憶なのか 夢の中にある妄想なのか どっちつかずの映像が脳裏に浮かぶ。 何だっけ。 結婚の約束。 四葉のクローバー。 もう一つ。 私は大切なことを指切り……した? 風が窓を叩く音がした。
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