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「那破さまは、古都音さんのことをよく話していました……」
東霖城の階段を下りながら、黒麗がぽつりぽつりとつぶやく。黒麗の口調はとてもやわらかい。
たまになつかしそうに瞳を細める。黒麗は那破のことを本当に慕っていたようだった。
「幼なじみで、かわいくて仕方なくて。俺と一緒に白鳳を護ってくれていた。俺を理解してくれたのは古都音だけだった。そういっていました」
海の底の城の中にいると分かりにくいが、そろそろ夕方になるはずだ。
気のせいか、空気が冷たい。辺りは、日暮れのどこか淋しい色に染まっていた。
「また会いたい。俺と一緒に海に落ちたけど、俺が助かったんだから、彼女だってきっと生きている。そういって、ずっと古都音さんのことを捜していました」
風花たちは黙って耳を傾けていた。黒麗の言葉のひとつひとつは優しい。
那破の、古都音や白鳳への想いが痛いほど伝わってくる。
「那破さまはこの城近くの陸地に来たこともあります……」
黒麗は城を囲む海を見上げた。
黒麗とほたるの姿が、日暮れどきの海の色に染まる。
ほたるの白い体がうっすらと青くなった。目を奪われるくらいにきれいだった。
少し冷えた夕暮れの海は那破を弔っているような気がした。
「那破さまと古都音さんは、本当はすごく近くにいたんですね。でもうまく巡り逢えなかったんですね……」
黒麗はブライアフィンを仰ぎ見る。
「あの、古都音さんはだいじょうぶでしょうか」
古都音はあの後もずっと、明るく振る舞っていた。だが、スーフィアに説得されて部屋で休むことにした。
そうしているうちに、白鳳と一緒に眠りについた。
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