第十三章 いつまでも夢を追う

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 あれ、と風花は思う。  前に、東霖城に来たときのことが思い出された。  あのとき見た白い影は、古都音さんが作った那破さんの幻影だったんだ……。  でも、今見た幻影とはどこか違う。  風花は手を握りしめて記憶をたどる。  今日のは影でなく霧のようだった。古都音の体も霊力色に光らなかった。 「皆さん、心配かけてごめんなさい。なかなか制御できないんです。霊力の負担になるからよくないのに……」 「あの、古都音さん。今の那破さんはもしかして……」  風花の声はかすれた。 「そうだよ」  夏澄がふいにつぶやいた。瞳を細め、うれしげに微笑む。 「古都音、今のはきっと本物の那破さんだよ……」  夏澄の言葉に、古都音がふしぎそうに顔をあげた。  夏澄の体が、澄んだ水色に光る。  彼は水晶に手をかざして霊力を放った。 「古都音、那破さんを呼んであげて。それが那破さんの回復には一番みたいだよ」  古都音は泣きそうな顔でうなずく。 「那破、お願い。姿を見せて……」  いって、目を閉じた。それきりなにもいわないが、心の中では何度も呼びかけているようだった。
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