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あれ、と風花は思う。
前に、東霖城に来たときのことが思い出された。
あのとき見た白い影は、古都音さんが作った那破さんの幻影だったんだ……。
でも、今見た幻影とはどこか違う。
風花は手を握りしめて記憶をたどる。
今日のは影でなく霧のようだった。古都音の体も霊力色に光らなかった。
「皆さん、心配かけてごめんなさい。なかなか制御できないんです。霊力の負担になるからよくないのに……」
「あの、古都音さん。今の那破さんはもしかして……」
風花の声はかすれた。
「そうだよ」
夏澄がふいにつぶやいた。瞳を細め、うれしげに微笑む。
「古都音、今のはきっと本物の那破さんだよ……」
夏澄の言葉に、古都音がふしぎそうに顔をあげた。
夏澄の体が、澄んだ水色に光る。
彼は水晶に手をかざして霊力を放った。
「古都音、那破さんを呼んであげて。それが那破さんの回復には一番みたいだよ」
古都音は泣きそうな顔でうなずく。
「那破、お願い。姿を見せて……」
いって、目を閉じた。それきりなにもいわないが、心の中では何度も呼びかけているようだった。
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