第十三章 いつまでも夢を追う

39/44
前へ
/300ページ
次へ
 やがて、また霧のようなものが現れる。薄く那破の姿になる。  那破は古都音に近づこうと足を踏み出す。だが、力なく体をふらつかせた後、霞んで消えていった。  古都音はまた語りかける。長い長い時間が過ぎる。  だが、那破は現れない。  古都音はすわり込んで涙を落とした。その古都音の肩の辺りにかすかな霧が現れる。  揺らめいて分かりにくいが、手の形だった。手は古都音の肩に手を当てる。  ブライアフィンに示され、夏澄は水晶ではなく、霧のほうに霊力を送る。やがて、那破の姿がはっきり現れた。   「逢いたかった、古都音」  那破はとても優しい目で古都音を見つめた。   「那破……っ」 「俺もこの日を待っていたよ」  古都音は倒れるようにもたれかかる。だか、那破の体をすり抜けてしまう。  古都音は那破の手に自分の手を重ねた。 「私もずっと、この日を待っていました」  白鳳がかすかな声をあげて那破にすり寄る。  那破は目に涙を浮かべた。 「白鳳も、よく無事でいてくれたね……っ」  那破は古都音たちを抱きかかえるように腕を回す。  古都音と白鳳は身を寄せて那破の手を受け止めた。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加