第十三章 いつまでも夢を追う

40/44
前へ
/300ページ
次へ
 海に落ちる梅雨に潤う東霖城。  その空間の海の前に、精霊たちのざわめきが響いていた。 「淋しくなるわ」 「元気でな、古都音、白鳳」 「氷晶郷に引っ越しても、私たちのこと忘れないでね」  次々に古都音に言葉を投げる。みんな笑顔だが、涙を流している精霊もいた。 「ありがとう、皆さん。本当に長い間お世話になりました」  古都音も一粒二粒、涙を落とす。  せっかく、那破さんと暮らせるんだから、泣いちゃだめと、となりの精霊に肩を叩かれる。すると、古都音はもっと涙を落とした。  そんな古都音に、空間の海の前に立つ那破は苦笑した。  ゆったりと腕を組む。  那破は霊体だが、少しも頼りなさげなところがない。しっかりと地に足をつけ、力強い仕草で動く。  儚げな古都音を包み込むようだった。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加