ねぇ、覚えている?

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ねぇ、覚えている?

「ねぇ、覚えているかしら?」  お互いの誕生日と結婚記念日。 そして出会った日。 祝ってほしいと思うのはいけないことなの? 「信じられる? あんなに熱烈にアタックしてきたくせに」  電話の相手は大学時代の悪友。 毎夜、合コン三昧だったルミに言う。 『あんたもノリノリで心理合戦していたじゃない』  私たちはもうアラフォー。いい年だ。 「昔はね。いまは会社の付き合いだって言って終電でも帰ってこないのよ。 それも毎週」 『あっ。ルミのだんなさんって会社でも重役に昇進したって話していたよね』 「そうそう」 『付き合いって色々あるんじゃない? 感染症にかからないためにも門限くらい決めておいたらどう?』 「そうしたいわよ。でもダメなんですって。 一番偉い人が飲み会大好きで断れないことが多いんだって。 若手を逃がすので精一杯なんだってさ」 『大変なのね。あ、旦那、帰ってきたからごめんね』  軽い挨拶をして電話を切った。 「大変かぁ」  ルミだって働いている。 パートとしてではあるけれども、仕事の大変さは理解している。 女性のパートだと人を管理することまでは求められることは少ない。 社歴が長くて、できる人なら任せられるかもしれないがルミには該当しない。 しかし旦那は違う。 正社員として統括することも多い。 人も物もシステムも。 思考としては理解できる。 しかし妻として贅沢な願いなのだろうか。 記念日一つや二つ覚えていてほしいと思ってしまうのは。 「私と仕事どっちが大切?って学生かって感じだよね」  冷蔵庫を開けてに取るノンアルコールビール。 一人で乾杯。 片手でスマホを捜査してSNSを開く。 「寂しいわ」 同年代から祝ってもらえましたの数々。 誕生日、結婚記念日、クリスマス、 お祭り好きな夫婦はハロウィーンまで様々。 私の家庭はそんなイベントをするほど余暇を持っていいない。 「さすがにうらやましいわ」 時刻は夜の11時56分。 帰宅のあいさつはまだない。
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