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「私は、かつての教え子であるあなたにも、かつての交際相手である瀬尾先生にも、幸せになってもらいたいと思ってるわ」
そう静かに言う。
目の前の彼女がどう思っていようと、それが私の本心なのだった。
何か感じるところがあったのか、彼女は黙っている。
そして十分すぎるくらいの時間をあけてから、ようやく口を開いた。
「……それは、先生が今、幸せだからですか?」
予想外の切り返しに思わず目を瞬く。そう──なのだろうか?
向いていなかった教職から足を洗い、しがない会社員ながら平和に生きて行けている今は、考えてみればまあそれなりに幸せなのかもしれない。
でもそれを言ってしまっては、教師だった頃の私に顔向けできない気がする。
だから私はふっと笑って言った。
「……どうかしらね」
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