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「……あなたが気にすることは何もないわ。私は自分から別れを告げたんだもの」
この場を収めるつもりで言ったのに、彼女は逆に表情を厳しくした。
「それを私が仕組んだって言ってるんです」
その声の調子が思いのほか強くて、私はとっさに口をつぐんだ。
若いというのはこういうことだなと思う。
自分の力で何かを変えられると信じている──盲信しているのだ。
周囲に起きた変化を、自分が起こしたものだと信じて疑わない傲慢さは、未熟さの証でありながらもどこか眩しい。
「……同じことよ」
私はため息を飲み込んで言った。
仮に彼女が私と遥平の破局を「仕組んでいた」のだとしても、実際にその通りになるとは限らない。
言ってみれば、ただ単に彼女のもくろみと私の選択が偶然一致しただけなのだ。
それは必ずしも彼女の策略が成功したということにはならない。
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