この壁の向こうに(1/4)

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「どうしても好きなんですよぉ……」  ある女子生徒から深刻な顔で「相談がある」と言われたときには、いじめか嫌がらせかと内心戦々恐々だった。  が、彼女の口から発せられたのは「恋愛相談」だったのだ。 「瀬尾先生の授業、ほんとにしんどくて……心臓バクバクで……」  泣きそうな顔で本当に苦しそうに言う。  高校生の頃の恋愛って、こんなふうに命がけだったのだろうか。  卒業してからまだ十年も経っていないはずなのに、うまく思い出せない。 「そう、なの……」  なんと言っていいかわからなかった。  というのも、この子が想いを寄せる「瀬尾先生」こそ、私の今の恋人なのだから。
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