この壁の向こうに(2/4)

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 遥平とは結局、あの後すぐに別れてしまった。  といっても、彼女のことが原因だったわけではない──単純に合わなかったのだ。  卒業式の後、彼女のことを問い詰めると、遥平は一言、こう言った。 「どうせ気の迷いなら、目を覚まさせてやるのも優しさだろ」と。  彼にとっては、なんてことのない一言だったのだろうと思う。  それでも彼女に投げつけられた言葉を引きずっていた当時の私は、それまでのすべてを否定されたような気になってしまったのだ。  この人と私じゃ生徒への向き合い方が違いすぎる──そう思ってしまった時点で、関係は続けられなかった。  でもそういう類いのドライさというか、切り替えの早さを持っている方が、長く教師を続けられるのだろうな、と今では思う。  そう、私はもう「先生」じゃない。
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