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カバンに精霊たちを携えて、町を走りました。
朝の鐘が鳴るまえから動いている新聞屋を訪ねてみると、5時の精霊が輪転機を動かそうとがんばっていました。記事を書くための紙の上で、9時の精霊がしかめっ面で万年筆を抱えて唸っています。
みんながいろいろな情報を知るために必要な新聞だって、時間に追われて、時間とともに発行されているのですから、締切時刻がなくなってしまっては、はじまりもおわりもなくなってしまいます。
町の秩序を守るため、マルコは精霊たちに戻ってもらいました。
商店街にある食堂へ行ってみると、竈の前で火を起こそうとマッチをすっている精霊がいました。11時の精霊です。
どうしよう。みんながお昼ごはんを食べられなくなってしまうよ。
涙を流しています。
店内のカウンターには、偉そうにふんぞりかえっている精霊もいました。
いちばんたくさんの房を揺らしている12時の精霊は、自分を起点にみんなが食事をはじめることを自慢に思っているものですから、静まった町はおもしろくありません。
マルコは声をかけ、なんとか時計に戻ってもらいました。
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