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ニャオー。
手にあたたかいものが触れました。ふわふわの手触りは、毛布とは違うものです。
逃げてしまったと思ったユキは、傍にいたのだと安心したとき、自分が毛布にくるまっていることに気がつきました。薄暗い部屋には、歯車が回転する音が響いています。
――そうだ、時計!
転がるようにして外へ出ると、時計台を見上げます。
文字盤に数字が順番に並び、長針と短針が時刻を示していました。朝の鳥が鳴く声も、かすかに聞こえてきました。
――時間がもとに戻ったんだ。
精霊たちを探した時間はどれぐらいだったのか見当もつきませんし、そもそもあれが本当だったのかもわかりません。
けれど、マルコの首には懐中時計がぶら下がっています。
家の引き出しに置いてきたはずの時計が、ここにあるのです。
ゴーン。
鐘が鳴りはじめました。
時刻は6時。一日のはじまりです。
鐘が鳴り終わるよりもまえに中へ戻り、荷物をまとめます。しっかりと鍵を閉め、ユキを連れて家に向かって走りはじめました。
帰っておとうさんに伝えるのです。
おとうさん。将来の夢が見つかったよ。
ぼく、立派な時計職人になる!
マルコの時間も、今まさに動きはじめたばかりです。
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