マルコと12人の精霊

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 あわてるマルコの目に、ひょこひょこ動くものがうつりました。  三角帽子をかぶった小さな影。たくさんいた人形のひとつでしょうか。 「ねえ、今って何時かな?」  声をかけると、それはぴょーんと飛び上がって逃げていき、柱時計の扉を開けて中へ入りました。そのあとを追いかけて、マルコは閉まりかける扉にすべりこみます。  けれどそこはまっくらやみ。  足をとられて転んでしまったマルコは、あたたかいなにかにさわりました。  ニャオー。 「……なんだ、ユキか」  いっしょに泊まっている白猫でした。  ユキの毛はとってもきれいな純白で、それが名前の由来です。名づけ親のおじいちゃんが言うには、東にある国の言葉だとか。初雪が降った日に拾ったので、ユキなのだそうです。  さて、今は何時でしょう。  マルコは、外へ出て時計台を見上げて目を見開きました。 「――ない。まっしろだ」  なんと。夢で見た時計とおなじように、文字盤から数字が消えてしまっているのです。  近くにある店に行きましたが、そこの時計もまっしろで、時刻がわかりません。  町はしんと静まっています。これもあの夢とまったくおなじです。  時計台へ戻ると、もういちど見上げました。  まっしろな文字盤の下のでなにかが動くのが見えて、二階へあがります。文字盤が覗ける小窓があるのです。  そこにいたのは、あの三角帽子の人形でした。 「ねえ、キミはいったいなんなの? どうして夢とおなじように、数字が消えてしまったの?」 「どうしてって、人間たちがクロウの時計台をなくそうとしているから。だから、カイロスが言ったのさ。オイラたちが消えてしまえばいいって」 「消える?」 「みんなどこかへ行った。だからほら、文字盤はまっしろ。時刻も消えて、世界は止まった。ずっとこのまんまさ」  こんなに静かなのも、まっくらなのも、「時刻」が消えてしまったからだというのです。
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