マルコと12人の精霊

8/12
前へ
/12ページ
次へ
 つぎはどこを探せばよいのでしょう。  お店、道路、街灯、軒先、街路樹。  町の中を歩きまわって、マルコはへとへとになってベンチに座りました。  空には太陽も月も星もなく、ただの闇が広がっているだけ。風の音もなく、誰かの足音もなく、マルコは震えそうになります。  ため息をついたとき、精霊のひとりが言いました。 「1のヤツはいなくてせいせいするぜ。オレがいればじゅうぶんさ」  12時が、腕組みをしています。  なんでも1時と12時は仲が悪くて、どちらが先頭なのかを争っているのだとか。  12時はたしかに区切りの時刻ではありますが、単に数字だけで考えると1のほうが先頭に感じます。  お昼の休憩がおわって、午後のはじまりになるのが1時です。  ――たしかにどちらも「はじまり」だなあ。  マルコが考えていると、11時の精霊がなにかを言いたそうにしています。12時の勢いにのまれて、いつだって隠れてしまうのが11時なのです。  それに気づいているのかいないのか、ふとっちょの10時がのんびりと声をあげました。 「そう言うけどさあ、ぼくもキミも、1がいなければ成立しないんだよう」 「なんだと!」 「1だけじゃないよう。1と2のふたつがないと、12の形はつくれない」 「ぐぬぬ」  11時もうなずいています。時刻の中でも、数字をふたつ使わなければいけないのは、10と11と12。  1と2は、大切なのです。 「ぼくは、1時にいてほしいって思ってる、よ」  ひっこみじあんの11時がめずらしくも勇気を出して言ったところ、その足もとからポンとなにかが飛び出してきました。  小さな身体を元気よく跳ねさせて、くるりと一回転。地面に着地した人形は、胸を張りました。 「そのとおり。オレさまは、なくてはならぬ存在なのだ!」  三角帽子の先っぽで、たったひとつの(ふさ)を立派に揺らして、1時の精霊は笑いました。あっけにとられる一行をよそに、1時は12時に近づきます。足もとに手を伸ばすと、えいやあとなにかを引っ張りあげました。  手の先にいたのは、二本の房を揺らした2時の精霊。  なんとまあ。1と2は、11と12の中にずっと隠れていたようです。  懐中時計には新しく数字が戻ってきて、埋まっていないのは、あとふたつだけになりました。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加