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つぎはどこを探せばよいのでしょう。
お店、道路、街灯、軒先、街路樹。
町の中を歩きまわって、マルコはへとへとになってベンチに座りました。
空には太陽も月も星もなく、ただの闇が広がっているだけ。風の音もなく、誰かの足音もなく、マルコは震えそうになります。
ため息をついたとき、精霊のひとりが言いました。
「1のヤツはいなくてせいせいするぜ。オレがいればじゅうぶんさ」
12時が、腕組みをしています。
なんでも1時と12時は仲が悪くて、どちらが先頭なのかを争っているのだとか。
12時はたしかに区切りの時刻ではありますが、単に数字だけで考えると1のほうが先頭に感じます。
お昼の休憩がおわって、午後のはじまりになるのが1時です。
――たしかにどちらも「はじまり」だなあ。
マルコが考えていると、11時の精霊がなにかを言いたそうにしています。12時の勢いにのまれて、いつだって隠れてしまうのが11時なのです。
それに気づいているのかいないのか、ふとっちょの10時がのんびりと声をあげました。
「そう言うけどさあ、ぼくもキミも、1がいなければ成立しないんだよう」
「なんだと!」
「1だけじゃないよう。1と2のふたつがないと、12の形はつくれない」
「ぐぬぬ」
11時もうなずいています。時刻の中でも、数字をふたつ使わなければいけないのは、10と11と12。
1と2は、大切なのです。
「ぼくは、1時にいてほしいって思ってる、よ」
ひっこみじあんの11時がめずらしくも勇気を出して言ったところ、その足もとからポンとなにかが飛び出してきました。
小さな身体を元気よく跳ねさせて、くるりと一回転。地面に着地した人形は、胸を張りました。
「そのとおり。オレさまは、なくてはならぬ存在なのだ!」
三角帽子の先っぽで、たったひとつの房を立派に揺らして、1時の精霊は笑いました。あっけにとられる一行をよそに、1時は12時に近づきます。足もとに手を伸ばすと、えいやあとなにかを引っ張りあげました。
手の先にいたのは、二本の房を揺らした2時の精霊。
なんとまあ。1と2は、11と12の中にずっと隠れていたようです。
懐中時計には新しく数字が戻ってきて、埋まっていないのは、あとふたつだけになりました。
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