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その町には、古びた小さな時計台がありました。
大好きだったクロウおじいちゃんが勤めていた時計台は、マルコにとって、もうひとつの家みたいなものです。おじいちゃんが亡くなったあとも、鍵を使って中へ入っていました。
かつてはいろいろなものを展示していましたが、いまはすっかりカラになっています。
というのも、昔より広くなった町に合わせて、新しい時計台ができるのです。
古い時計台からひとが消えていくことは、なんだかさみしくかんじます。
館長であり、立派な時計職人でもあったおじいちゃんは、訪れたお客さんにさまざまな説明をしたものですが、マルコには勉強が足りません。自分がなにをしたいのかすら、じつはわかっていないのです。
どこかの親方へ弟子入りすることだって、まだできません。それは12歳になってからと決められています。
なにもかも。10歳のマルコには、ずっと遠い未来なのでした。
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