追っかけパパの娘は苦労する

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 パパは追っかけだ。  年甲斐もなく美少女アイドルの熱心なファンで、部屋は見渡すかぎりアイドルの限定グッズが並び、壁には大きなポスターを恥ずかしげもなく飾ってある。  もちろんファンクラブにも入会しており、ファンのあいだでも有名な存在なんだとか。  そんなパパを娘が尊敬している……はずがない。  そのアイドルと同じの年の私からすれば、まさにドン引きとしか言いようがなく、辟易する毎日を送っている。 「パパ、今日も遅くなるから」  玄関から大声が聞こえる。  仕事で、ではなく、アイドルの追っかけで遅くなるのだ。 「今日はどこまで行くの?」 「大阪。今日は大阪の下町ロケの生中継だから。こころたんを間近でじっくりと見ることができる絶好のチャンスなんだ」  実の娘になんの配慮もなく説明するパパ。  このデリカシーのなさに怒ってもいいのだろうけど、もう慣れてしまった。 「パパと一緒に行くか?」 「東京からわざわざ行くわけないじゃん。とにかく、つかまらない程度で活動してよね」
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