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とりあえず、ふざけた感じで返しておこう。
――朝からジョークで返してくれてありがと! おむらいすくんは優しいから、すぐに彼女が出来そうだね♪
そうだ。これはきっと、そういう優しさだ。
昨晩の私のつぶやきを見て、心配してくれたんだ。
それにしても、ここまで真面目に捉えられてしまうと、恥ずかしさが増してしまう。
お願いだから、もう忘れてください……。
気を取り直し、服を着替え、カーテンを開ける。眩しいほどの朝日が、小さなワンルームを明るくしてくれる。
建物がひしめき合う都会で窓から空が大きく見えるのは、一つの贅沢かもしれない。
最上階の部屋でよかったな、と毎朝思う。
鼻歌を歌いながら目玉焼きをつくり、それをトーストにのせて頬張る。
今日は日曜だし天気も良いから、気晴らしにどこかへ出かけようかな。
そんなことを考えていると、再び通知音が鳴った。
「もう、いいよ……」
そう言いながらも、ついメッセージを開いてしまう。
――ジョークじゃないです。彼女をつくるなら、茜さんじゃないと嫌です。
思わず、飲んでいた牛乳を吹いてしまった。
「えええ!?」
やっぱり本気で言っているの?
というか、正気ですか……?
――なんで私が良いの? 会ったこともないのに
――じゃあ、会いませんか?
――いやいや、そういうことを言ってるわけじゃなくて
――今日、予定ありますか?
――予定はないけど……。
――じゃあ、12時に舞浜駅の南口改札でどうですか?
まずい。
相手のペースにどんどん乗せられている……。
というか、なんで舞浜?
――私、会うなんて言ってないよ
――一度で良いから、会ってもらえませんか? それで僕のことが嫌だったら、もう関わりませんから……。
なぜこの人は、顔も知らない私にここまで必死になるんだろう。
好かれるような特別なことをした覚えもない。
彼も、恋人が出来ずに苦戦している人間なんだろうか。
それとも、まさか誰にでも同じことを言ってる……?
いやいや、さすがに違うよね。話し方も真面目な感じだし……。
――わかったよ。行けばいいのね?
根負けした私は、スマートフォンを置いて溜め息をつく。
今までの印象だと穏やかでおとなしそうな感じだったのに、意外と強引なんだなあ。
まあ、どっちにしてもどこかへ出かけようとは思ってたし、一人で気晴らしするよりはマシかな……。
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