「可愛い」

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 やがて、待ち侘びたアボカドバーガーのセットがテーブルに届く。  バンズから溢れんばかりのハンバーグとアボカド、色鮮やかな野菜。立ち上る香ばしい匂い。思わずテンションが上がる。 「えーっ、美味しそう! いただきます!」  よく見ると、彼も同じものを頼んでいた。 「同じなんだね、ハンバーガー」  私に問いかけられ、彼は恥ずかしそうに下を向く。 「茜さんと同じもの、食べたくて……」  胸の中が、キュッと狭くなる音がした。 「あれ……。もしかして、私がこのハンバーガーを食べたがってたの知ってて、ここにしてくれたの?」  そういえば、いつだったか「このお店のアボカドバーガーが食べたい!」とSNSでつぶやいたことがあった。 「……はい」  彼の顔は、相変わらず赤い。 「そっ、そうだったんだね。ありがとう! 冷めるから食べよっ」  この気持ちは何だろう。  心の動揺を隠すように、私はハンバーガーにかぶりついた。 「んー、美味しい!」  思わず笑みが(こぼ)れる。この感動は、ハンバーガーが美味しいことなのか、それともーー。 「……可愛い」 「へっ?」  聞き間違いかと思った。  視線をハンバーガーから正面へ移すと、圭一くんは優しい微笑みを浮かべ、こちらを見つめていた。 「『可愛い』?」  キョトンとする私に、彼はハッとして慌て出す。 「いやっ! 違います! 可愛いとかじゃなくて! 美味しそうだなって!」 「……そんなに全力で否定しなくても良くない? っていうか、食べればいいじゃない」  私が頬を膨らますと、彼は更に慌てる。 「いやっ、あの、ごめんなさい! 違くて、ええと……」 「もう、何?」 「だから、その」  真っ赤な顔のまま俯くと、小さく声を漏らした。 「……『茜さん可愛いな』って、思って…………」    食べかけのハンバーガーが、手から滑り落ちる。 「わっ」  なんとか持ち直して、彼を一喝する。 「もう、何言ってんの!? 年上をからかうのやめてよね!」 「ご、ごめんなさい。でも、からかいじゃなくて……」 「もういいから! 食べよう!」  ……ああ。何これ、顔が熱い。どうか彼が気づきませんように。  恐る恐る顔を上げると、彼はようやくハンバーガーを口にするところだった。 「……美味しいです」 「え、嘘だあ。全然かじれてないじゃん!」 「ちょっと嘘つきました……」 「あはは、何それ! もっと中身のところをかじりなよ」 「はい……」 「どお?」 「今度は、本当に美味しいです」 「もーっ、本当かなぁ」  思わず声に出して笑う。そんな私を見て、彼も嬉しそうにはにかんだ。 「はー、美味しかった! ごちそうさまでした」 「はい」 「これから、どうするの?」 「せっかくなんで、このショッピングモールの中を見てまわるのはどうでしょうか」 「いいね! 行こう」
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