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探しもの
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『探しもの』
彼氏を探しています。
二年前、失くしてしまいました。もう、ずっと見つかっていません。
特徴は、『私のことを好きになってくれる男性』です。
見つけたら茜まで連絡ください!
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こんな文章をSNSにあげた私は、スマートフォンの画面を見つめながらボロボロと泣いていた。
二年前に大好きな年上の彼氏にフラれて以来、独り身の時間をずっと味わってきた。
別れた彼のことは、もう吹っ切れた。
だけど、なかなか新しい彼氏ができず、寂しさを募らせていたのだ。
もちろん、この二年間、何もしなかったわけじゃない。
友達に誘われた合コンや街コンへ足を運んだり、いいなと思った人を食事に誘ったりもした。
でも、いつもどうしても上手くいかない。
合コンでも街コンでも、選ばれるのは私じゃなくて友達のほう。食事まで行った相手も、最後には「友達にしか思えない」とフラれてしまう。
見た目も中身も、それなりに努力して磨いてきたはずなのに……。
「もう、誰でもいいから……。私を好きになってくれる人、いないかな」
恋活に疲れて、頭がおかしくなったのだろうか。こんなことで泣くなんて、情緒不安定だ。
そんな血迷った私がSNSに衝動的にあげたのが、『探しもの』という題名のそれだった。冗談っぽく書いたが、私にとってはけっこう深刻な問題だ。
でも、自分であげた文章を読み返していくうちに、頭が急激に冷えていくのを感じた。
「……何やってんだ、私は」
我に返ると、こんなことをつぶやいている自分が猛烈に恥ずかしくなる。
私は慌てて、つぶやきを削除した。
投稿から削除まで、わずか五分。
友達や知人が見ていないことを祈る……。
「バカみたい」
本当に、深夜に考えることなんて、ろくなことがない。きっと疲れているんだ。もう寝よう……。
ベッドにダイブした直後、枕元で通知音が聞こえた。
「んん……?」
寝転んだままスマートフォンを手に取ると、SNSにメッセージが来ている。
「こんな時間に?」
開いてみると、SNS上で相互フォローをしている『おむらいす』というニックネームのユーザーからだった。
顔こそ知らないものの、お互いのつぶやきに日常的にコメントし合う関係だ。オムライスが好きだから、そう名乗っているらしい。
性別は、「僕」と言っているから、たぶん男性。
年齢は私より二つ下の、二十歳。
メッセージには、たった一言が記されていた。
――ここにありますよ
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