第一部

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 話を戻すが、難民受け入れの施設、および法案が整備されていなかったのは理解してもらえたと思う。次にこれも重大な問題だが、難民向けの仕事の数が限られていたのだ。  そもそも日本では情報化が進み、それに足並みを揃えてAI技術も以前より発展していた。AI技術の発展により、タクシー、バス、電車、航空機、船舶等の自動操縦化、事務処理の機械化等が進んだ。その結果、日本人の失業率は増加し、街には職を求めて彷徨う傀儡たちが増えた。そもそも、日本国内だけでも失業率が増加していたのに、それに加えて難民受け入れなどを敢行すれば、どうなるかなど目に見えている。そうして、町は日本人失業者に加えて、生きるために職を求める難民たちで飽和することとなった。  言語と人種で噴きこぼれた街。彷徨う人々は日銭を稼ぐために、非合法な仕事に手をつけるようになる。殺人、強盗、売春、麻薬、その他諸々。日本はもはや安全安心の国ではなくなった。路肩で死人は出るし、裏路地では麻薬で脳をやられた廃人が転がっているし、その隣で強姦が行われ少女の純潔が奪われる。まさに地獄の様相であった。高度経済成長以降の先進国たる日本の姿は、いったいどこへ消え失せたのか。  まぁそんなこんなで、日本は世界有数の犯罪大国へと変貌した。犯罪認知件数は爆発的な勢いで増加し、そもそも認知されていないであろう事件も増えた。既存の警察組織だけでは、もはや日夜行われる狼藉の半数すら捌き切ることが不可能になったのだ。
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