第一部

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 逮捕権が民営化されたことで、警察からの報奨金目当てに、米国流に言えば賞金稼ぎ(バウンティ・ハンター)と呼ばれる者が生まれた。彼らは仮逮捕権を行使し、被疑者を拘束して、報酬を得る。それだけなら問題は少ないのだが、話はそううまくはいかない。  問題とされたのは、いわゆる賞金稼ぎの被疑者に対する扱いだった。かいつまんで言うと、被疑者の人権が損なわれる行為が往々にしてまかり通っていたのだ。  逮緊法には、仮逮捕の具体的な手段は明文化されていない。つまりは仮逮捕の方法自体が流動的で、例えば警察は被疑者を手錠によって拘束するが、賞金稼ぎにはその規定はない。端的に言うとどのように仮逮捕してもいいわけで、酷い場合は生きていればいい、という状態まで被疑者が暴力を受けて拘束される事例もあった。  運悪く手荒な賞金稼ぎに捕まってしまったら、殴る蹴るでは飽き足らず、財産を奪われたり、不当な請求の対象とされてしまうこともある。更に悪い例で言えば、被疑者が女性で賞金稼ぎが男だった場合、まさに路地裏で行われていることが再現されてしまうわけだ。こういったことが原因で、賞金稼ぎの風評は今のところ最悪で、まさに薄汚いドブネズミ扱いをされている。
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