第一部

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 ここでまたもや問題が生起する。民警のみが生き残ったことで、仮逮捕権を行使するものが彼らしかいなくなったのだ。  そもそも逮緊法というものは、名前の通り“緊急措置”法である。緊急措置と言うだけあって、一時的なものだ。だから日本国内の犯罪が落ち着けば、この法は役目を終える。つまり逮捕権は公に返還されることとなり、仮逮捕権はその存在を否定される。これは民警の連中にとって面白くないことだ。せっかく稼ぎ口を得たのに、それをわざわざ返還せねばならないのだから。  結果、民警は仮逮捕権の常設化を国に主張することとなった。しかし国は逮捕権を民営化したまま放置する危険性を予想している。ここで民警と国が争うことになった。仮逮捕権を巡っての戦いは泥沼化の一途を辿り、最終的には民警が武装化し、日本は内戦状態に陥った。  逮捕権の行使の補助が目的の民警が、その上位組織である政府と争う。内包した矛盾が皮肉だが、警察側としては仮逮捕権の行使を行う民警は都合の良い存在であり、政府の要請に従って依頼を差し止めるなどはしなかった。まぁ、それが泥沼化した一因でもあるのだが、この場ではこれ以上言及しないことにする。
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