第四部

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 俺は周囲に監視カメラが存在しないことを再確認すると、恐らく兵舎であろう建物に使づいていく。基地内はかなり広く、航空機用の滑走路が大部分を占めていた。この基地のどこかにセレネはいる。早いとこ見つけ出して、連れ出さねば。俺は兵舎に近づいていき、外観をよく観察した。四階建ての建築物で、主に自衛隊員の居住空間なのだろう。俺の位置から目の前は食堂のようで、それこそ高校の学食のような雰囲気を醸し出していた。どこから侵入しようか考えながら、外回りを一周する。やはり自衛隊だからか戸締りは厳重で、どこか開きっぱなしの窓などは存在していなかった。そもそも窓自体も少ないわけで、そこからの侵入は難しそうだ。  侵入方法を考えながら兵舎の周りを歩いていると、ふと、兵舎の正面玄関から人影が歩き出てきた。注意深くその人影を観察する。どうやら自衛隊員のようで、冬なのに半袖という季節感をわきまえない服装で歩いていた。  どうする。ここで拘束して、セレネの居場所を聞き出すか。しかし相手はただの自衛隊員だ。その管轄でなければセレネのことは知らないのが普通だろう。下手に拘束すればそれだけ見つかる可能性は高まる。こういう時、賞金稼ぎは早急かつ適切な判断が求められた。しかしセレネを知っている確率は高くないだろう。それを踏まえて接近するかどうか判断しなければならなかった。
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