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「にしても暑いな.......」 面接を終えたしばらく後 暇つぶしを兼ねて散歩をしている。 「現在気温33度.......?暑いわけだ.......」 もう7月になる。 それにしても暑い。 「もう帰るか.......散歩する気が失せた」 早々に帰路に着こうとしたその時 聞き覚えのある叫び声が聞こえた。 「うわああああああああああ!!」 「なんだ.......?」 声の方向に目をやるとさっき面接に来た男が叫びながら猛ダッシュしている なんとも余裕のなさそうな顔で 「何をしているんだあいつは.......」 「ぐえっ」 こけた。 なんとも間の抜けた男だ。 「おい、何をしている」 「あ、さっきの」 「散歩していたら叫びながら走り回るやつがいたんで見たら見た事のある顔だったんでな。今のも幽霊か?」 「あはは.......」 否定することなく苦笑いしている。 変な奴だ。 「あ、危ないっ!!」 「は.......?」 突然タックルするが如く押し倒された。 「怪我は無いですか!?」 「いや、待て」 「はい?」 「急に何をする」 「え.......?あっ.......」 今の状況に気付いたのだろう。 傍から見れば急に道端で女性を押し倒した不審者だ。 「弁明はあるか?」 「いえ、あの」 「ないなら警察に行くぞ」 「あれみてください」 「ん?」 促された方を見てやれば塀に穴が空いていた。 よくよく見ると穴の向こうに傘が見える。 「傘.......?こんな暑いのにか.......?」 「あれが飛んできたんです」 「そうか。それは助かったよ」 いや、待て。 それで納得するのはおかしい。 こんな暑い日に傘があること自体がおかしいし塀に穴が空くほどの速度でものが飛ぶ風も吹いていない。 どう考えてもおかしい。 「あの.......」 「なんだ。今考え事をしているから少し.......」 「今のが幽霊の仕業って言ったら信じてくれます.......?」 .......なるほど。 確かに不自然な状況で不自然なものが飛んできている。 常識的に考えればありえない状態だ 少し面白くなりそうだ。 「おい」 「え、はい」 「ちょっとうちに来い」 「へ?」 「お前の幽霊の話、少し詳しく聞かせてもらおうか」 「わかりました.......」 一度事務所に連れ帰ることにした。 詳しい話はそれから聞かせてもらおうじゃないか。
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