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「それで?」 「はい、厳密に僕が言う幽霊っていうのは死んだ女性の念とかそういうのではなくて僕にいつも降りかかる災難のことなんです」 「ほう」 「さっきも見ましたよね。ありえない速さで傘が飛んできた」 「そうだな。確かに不自然だった」 見にかかる不幸、か なんともひっかかる言い方だ だが、しばらくの暇つぶしにはなりそうだ 「おい」 「え、はいなんでしょうか」 「今日の面接の件、気が変わった。採用にしてやる」 「え.......?」 「なんだ。嫌なのか?」 「あ、いやそういう訳じゃ」 「なら決まりだ」 そういえば大事なことを忘れていた。 「お前、名前はなんだ」 「えっ」 「だから名前」 「履歴書に書いて渡したはずでは.......」 履歴書?あぁ確かに 「そうだったな。すまんすまん」 酷く困惑した顔をされた。 仕方ない。私は基本的に人に興味が無いんだ 「小鳥遊(たかなし) 晴人(はると)か」 「そうですよ。さすがに忘れないでくださいよ」 「すまんな。基本的に人に興味が無いんだ」 「えぇ.......ならなんで求人をかけてるんですか?」 「2つ理由がある」 「2つ、ですか」 「1つは暇つぶし」 指を立てる仕草をしながら説明してやる 「もう1つは相棒探しだ」 「相棒ですか?」 おおよそ理解ができないといった顔をしている 「かのホームズとワトソンの如く、難解な謎や事件を解決するためには私一人では足りないだろう?つまるところ求人でワトソンを見つけるわけだ」 「な、なるほど.......変わった人ですね」 「そうか?世の中には同じような人間はいるぞ。お前の尺度では変わっていると捉えることもできるだろうが」 さて。 あれから話していたらいつの間にやら22時だ。 夕飯の時間をとっくに過ぎている 「おい小鳥遊」 「え、はい」 「私は食事を摂る。お前は帰っていいぞ」 「わかりました」 さて。 今日はどのレトルト食品を食べようか そんな風に悩んでいると応接室から物音が聞こえた。 「小鳥遊?もう帰れと言ったはず.......」 誰もいなかった。 いや、誰かはいた。 椅子が出口側に倒れている 近づく声に焦って逃げたのだろう。 「.......なるほど」 今日はどうしようもないな。 「施錠し忘れた私が悪いな」 小鳥遊を帰らせてから施錠確認をしていなかった自分の落ち度だ。 空き巣か、はたまた小鳥遊の言う幽霊とやらかはわからないが少しはいい暇つぶしになりそうだ
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