20.ノート

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 保健室の扉を開けると、中には誰もおらず、仕切りカーテンの閉まっているベッドがひとつあった。 「圭一?」  声を掛けると、すぐに圭一の声で返事がある。カーテンの隙間から覗くと、ベッドの端に座った圭一がこちらを見た。 「旭」 「お前、寝てないのかよ」  二人分の鞄をベッドの上に置くと、圭一が手を伸ばしてくる。意図が分からないまま手を差し出すと、ぐいっと引かれて抱きつかれた。 「旭ー……しんどいー」 「そりゃそうだろ」  とりあえず頭を撫でる。 「送ってってやるから、帰ろ」 「寝てしまいそうだから帰りたくない」 「ばか。寝ろって」  頭を起こした圭一の顔は、目の下に隈ができていて、明らかに憔悴している。 「……こんなに」  言いかけて口をつぐむ。圭一の目は半分閉じていて、今にも眠りそうに見えた。旭は背中に回った圭一の両腕を掴んで、そのまま引っ張った。 「ほら。立って。歩ける?」 「んー」  床に足をついた圭一から手を離し、旭は鞄を二つ手に取ったが、すぐに横から圭一の手が伸びてきて、そのまま自分の鞄を取り上げる。 「大丈夫かよ」 「ばか。眠いだけだっての」  多少眠気が晴れたのか、少ししっかりした口調で圭一がそう言う。  そのまま、二人は帰路に着いた。
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