20.ノート

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 朝食は、駅前のファストフード店でモーニングセットを頼むことにした。 「俺、モーニングって初めて」 「俺も。前から食ってみたかった」 「美味そうだよな」  カウンターでそれぞれ注文してから、トレイを持って座席の方に行く。日曜日の朝だからか、思ったほど混んでいない。適当なテーブル席に向かい合って座り、早速食べ始めた。 「――なあ。柏崎さ、あいつも俺のこと色々知ってるんだろ」 「うん。多分」  圭一の問いに、旭は頷く。 「てか、それでこの前、二人で昼飯食ってたんだな」 「あ、そう。柏崎くんが心配して来てくれたんだ」 「俺、あん時ほんとはすげえ嫉妬っていうか、むかついてたのに」  そう言いながら、圭一は笑う。 「柏崎に聞いてもしれっとしてるしさ。でも実は俺のせいだったなんてなー」 「……お前、何かもう、割と平気?」  あまりにもあっけらかんとした圭一の態度に、旭は思わずそう聞いてしまった。 「平気とかじゃないけど。寝不足で何かちょっとぼうっとしてるかも」 「大丈夫かよ」 「うん。眠くはないから」 「飯食ったから、後で眠くなるんじゃね」 「かもな。そしたら殴って起こして」  でも落ち込んでるよりはいいのかもしれない。そう思い、旭は頷く。落ち込んでも考え込んでも、どうにもならないのだし。 「俺、もう絶対に忘れたくないからさ」 「うん……でも、徹夜なんかそんな続かないだろ」 「ほんとは、昨日もちょっとだけうたた寝しちゃったんだけどさ。忘れてなくてまじ良かった」 「お前、元から結構寝る方じゃなかった?」 「だからさ、昨日色々ネットで調べたんだよ。そしたら何か、夜に連続8時間寝るんじゃなくて、起きてる時間をもっと細切れにして、その合間合間に短時間だけ寝るみたいな睡眠法があるらしい。45分睡眠とか」 「いや……そんなの」 「最悪、それだったら忘れずに済むかも」  何と言っていいのか分からず、旭は言葉に詰まった。そんなことをしていたら圭一はすぐに体を壊してしまうだろう。でも忘れたくない圭一の気持ちを否定できない。旭だって、本当は忘れてほしくないけれど。 「でも学校あるし、無理だって。運動部だし」 「まあ、こうなったら部活は辞めてもいい」 「ちょ、待てって」 「いざとなったら、ってこと」  旭の表情を見て、圭一は話を変える。 「柏崎にも、知ってることないか聞いてみようと思って」 「ああ……うん、いいかもな」 「だろ。あいつの視点で何か分かるかもしれないし」 「うん」 「……ほんとに、何で忘れるんだろうな」  圭一がぽつりと呟いた。
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