84人が本棚に入れています
本棚に追加
辿り着いた先は近所の公園。
そう言えばこの公園のすぐ裏手には小学校があって
定期的にチャイムが響くんだと思い出せたのは前に ここで休んだことがあったから。
それはちょうど元彼と別れた直後。
会社を辞めようかと悩んでいた時だった。
あの時の私が座っていたベンチに腰掛けている一人の青年。
俯いているから顔はよく見えないけど、あれは
間違いなく光君。
息を整えながらゆっくり近づくと、足音で気づいた
のかピクリと肩を揺らした。
でも、顔を上げることはない。
視線は地面に落とされたまま。
「ここに居たんだね。」
「………。」
あの時とは逆に、私が光君の隣にそっと座る。
サラサラとした黒髪が風に揺れていた。
とても静かな時間。
気まずさはない。
ただ、何から話したらいいか分からないだけ。
そっと息を吸った私は隣に話しかける。
「電話ありがとう。私は光君の連絡先を知らないから探し回っちゃった。」
「………。」
「手紙も、ありがとう。」
「………っ。」
その時、少しだけ彼が反応を見せたのを私は
見逃さなかった。
最初のコメントを投稿しよう!